九州の発酵力プロフェッショナル対談 第四回【NPO法人食育推進ネットワーク福岡 理事長 五十嵐和恵】

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【九州の発酵力プロフェッショナル対談 第四回】


九州の発酵力シリーズをはじめ、麻生醤油の商品を愛用いただいているプロフェッショナルと、麻生醤油代表の麻生隆一朗が対談インタビュー。それぞれの視点から「食」へのこだわりや、発酵食品にまつわる質問など、様々なお話をお届けします。


第四回は、NPO法人食育推進ネットワーク福岡 理事長を務める 五十嵐和恵様。
食育インストラクター、フードコーディネーター、ポジティブ・エイジング アドバイザーとしての視点から、食へのこだわりを伺うことができました。

<目次>
1. 「ほんもの」の食へ
2. 「ゆる薬膳」
3. 麻生醤油の商品について
4. 九州の発酵力伝承ツアーについて
5. 気になっていたこと
6. 今後の目標
7. まとめ






1.「ほんもの」の食へ
—早速ですが、五十嵐さんのソウルフードは何でしょうか


五十嵐様 ソウルフードは、おにぎりです。いわゆる「かしわめし」のおにぎりとか、自宅で作っていた梅干しの赤しそが細かく刻んであるおにぎりですね。週末になるとおにぎりが出てきて、それが「ごちそう」だった記憶です(笑)
ずっと「かしわめし」のおにぎりは全国にあるものだと思っていたので、東京に住んではじめて博多の食べ物だと知りました。


麻生 「かしわ」っていう名前じゃないですもんね。


—お料理や食にこだわり始めたきっかけはなんだったのでしょうか


五十嵐様 「ほんもの」の食というものにこだわりはじめたのは、42歳の時です。
食そのものに興味を持ちはじめたのは、20代後半N.Y.に住んだ時。食べるものではなくて、お皿とかカトラリーなどテーブルまわりのものに興味を持ちました。日本で見たことのない素敵なものがN.Y.では本当に安く買えたんです。


—そこから、食材や調理の方向へ興味がシフトしたきっかけは何だったのでしょうか。


五十嵐様 N.Y.で素敵なテーブルまわりのものに触れたことがきっかけで、帰国後、テーブルコーディネーターになりたいと思ったんです。東京で学校に通い勉強を始めましたが、お金が無いと無理だな~って気づきました(笑)。高いお皿を使えば立派に見えるじゃないですか。そんな時、ちょうどフードコーディネーターという資格ができて…。フードコーディネーターは、飲食店の経営者と店舗の架け橋としての仕事。30代の時、フードコーディネーターとして東京の百貨店にある飲食店を中心に、外食産業に携わっていました。その中で、原価を考えて栄養のバランスが悪くなっていたり、働くスタッフのまかないが健康的でなかったり、いろいろと疑問を持ちました。まずは健康を優先すべきだと思い、池袋にある百貨店の飲食店でメニューに、使っている食材の効能や季節のしきたりを入れたんです。スマホもない時代(笑) 一人でご来店されたお客様は時間を持て余すので、書かれた情報を見て楽しめるようなメニューブックを提案しました。今思えば、時代を先取りしすぎましたね。


麻生 今の時代はそういうのがうけますよね。


五十嵐様 そうなんです。10年以上前にやっていたので、早すぎたんですね。
飲食店に疑問を持つうちに、「健康」というものをより意識するようになりました。
40歳過ぎて福岡に戻ってきた当初は、東京の味に慣れてしまったので、外食で食べるものがすべて甘くておいしく感じられませんでした。だから、自然食やマクロビオティックに興味を持ったんです。そっちのほうが体にも良いし。そのころ、今活動しているNPO法人食育推進ネットワーク福岡を知り、セミナーやお料理教室に参加するうちに「ほんもの」の食を知り、食材や料理に興味を持つようになりました。



2.「ゆる薬膳」
—それでは今現在、食事を作る時に気を付けていることやこだわっていることは何でしょうか


五十嵐様 すべてにこだわっているので何からお応えすればよいのか… あっ、発酵食品を毎日食べることですね!(笑)
基本的に、お料理は素材を活かすようにしています。食材は旬のもの、地産地消のもの、添加物が極力少ないものを選び、基本調味料とアブラは「ほんもの」を使っています。すべて無農薬の野菜を買うわけにはいかないので、まずは基本調味料とアブラを「ほんもの」にすることが大事です。これはセミナーなどでも皆さまにもおすすめしているんですよ。
それから、使う食材を多くすれば必然的にいろいろな栄養がとれるので、バラエティとバランスを大事にしています。基本的な考え方は、薬膳の五行説。五色【青(緑)・赤・黄・白・黒】と五味【酸・苦・甘・辛・鹹(天然の塩味)】が一回の食事でとれているかを考えています。細かい栄養を覚えなくても、色や味ならすぐ分かるじゃないですか。「黒が無いから黒ごまかけようか」とか、「酸味が無いから梅干し食べよう」とか、それなら簡単にできるので。


—薬膳って、難しいイメージがありますよね。


五十嵐様 まず漢字の画数が多すぎですよね(笑)。「薬」って入っているから、漢方薬を入れるんじゃないかとか。中華料理の杏仁豆腐のように、必ずクコの実が入っているとか。そういう薬膳もあるけれども、特別な素材や高い食材じゃなくて、いつもの食材で「楽しく」て「美味しく」て「続けられる」もの、というのが私の考え方なので「ゆる~い薬膳」です。
例えばひじきの煮つけだと「白」が足りないじゃないですか。そんな時は美肌効果があっていつも常備している「ハトムギ」をパラパラっと入れたり…。5つの色が揃ったから「薬膳」だ!みたいな(笑)。


—そういうのだと、続けられますよね。


五十嵐様 そうなんです。薬膳は決して中華だけではなく、和食やフレンチ、イタリアンでも何でもあり。薬膳の基本的な考え方だけ取り入れるのが、私のお伝えしている「ゆる薬膳」なんです。





3.麻生醤油の商品について
—こだわりの中で、麻生醤油の商品を使っていただいていますが、どこに魅力を感じたのでしょうか?


五十嵐様 五源醤油は、はじめて使った時「焼きもちを食べている」ことを想像させるようなインパクトの強さに驚きました。
家族のみそは、もちろんお味噌汁も良いけれど、そのままご飯に乗せて食べるのも好きです。強すぎず、弱すぎずちょうどいいお味ですよね。アレンジしておかず味噌にもします。あとは、「家族のみそ」っていうネーミングも好きです。姪っ子の結婚祝いにもプレゼントしました(笑)
甘酒は、夏と冬で配合を変えるのがすばらしいですね。私自身も甘酒を作るんですが、麻生さんの甘酒は濃厚なので「甘麹」として使いやすいです。


—ご自身のお仕事や生活と「発酵食品」がどうか関わっていますか?また今後どんな風に関わっていきたいですか?


五十嵐様 私にとって発酵食品は毎日の当たり前。みそ、醤油、白たまり、甘酒、塩麹、醤油麹、ぬか漬け、ザワークラフト、梅みそ…と自分でもいろいろな発酵食品を作っています。私は「ポジティブ・エイジング」を提唱しているのですが、いつまでも若々しく元気に人生を楽しむためにも発酵食品を毎日食べたいです。
仕事としては、今で言う「菌活」ではないけれども、発酵食品をあまりとらない方にそのすばらしさを伝えていけたらなって思います。今麻生さんに「醤油づくりキット」を作っていただけないかとご提案させていただいているのですが、「ほんもの」の醤油のことは伝えていきたいですね。麻生さんとは以前「家族のみそ」を使った「味噌玉づくり教室」をご一緒させて頂きました。これからも発酵食品の良さを私らしく伝えていきたいなと思います。





4.九州の発酵力伝承ツアーについて
—ありがとうございます。五十嵐様から聞いてみたいことはありますでしょうか。


五十嵐様 まずは、「九州の発酵力伝承ツアー」について、今後の展開を伺いたいです。


麻生 ツアーもとうとう20回になりました。2年前から開催して、一月に1回くらいのペースでやらせて頂いています。ツアーを通じて、弊社の商品を知ってもらうというのはもちろんなんですけれども、今までコラボさせていただいた飲食店さん、和食やイタリアン、フレンチなどなど、色んな飲食店さんが弊社の調味料を使ってアレンジしてくれています。僕らは料理人ではないので、調味料がどういう形に料理されるのか、どういう風に使われることで一番美味しい状態でお客様に提供できるのか、そういったところがツアーで学べたところです。ツアーで生まれたレシピを、ご家庭でも使って頂いたりだとか、アレンジしていただけたら良いのかなと思います。これからもツアーは続けていきます。その中で、お客様の声をダイレクトに聞きながら、自社の醤油・味噌・甘酒を使った新しい加工品の開発をしていきたいと思っています。参加してくださったお客様が、自社の商品も含めて、もっともっと発酵食品の魅力を知ってもらえると嬉しいですね。



5.気になっていたこと
五十嵐様 2つ目の質問として、これは絶対聞きたかったんですけど、結婚のご予定はあるのでしょうか?(笑)


麻生 来ましたね(笑)いやまあ、近々考えてはいます。プライベートな話ですけれども、相手の方が良ければとは思っています。


五十嵐様 それを聞けて安心しました!やっぱり麻生さんの立場っていうのは、食の部分でサポートしてくださる奥様の顔が見える方が、もっと深みが出てくるでしょうし。いずれ後継者となるお子様ができると、安心してがんばれるでしょうね。もちろん「お料理上手な女性」が良いと思いますけれども(笑)。


麻生 そうですね(笑)


五十嵐様 お料理好きな方と結婚されるんだろうな、って楽しみにしていたので、今日はこれが聞けたことが一番うれしいです(笑)麻生さんが幸せな家庭を築くことは周りの人の幸せに繋がっていきますからね。







6.今後の目標
五十嵐様 最後に、麻生さんから私に質問などありますか?


麻生 そうですね。五十嵐さんは現在様々な場所で講師をされていますけれど、五十嵐さんとして目標や、最終的にどういう人間になりたいかっていうのはあるのでしょうか?


五十嵐様 最終的にどういう人間になりたいか?深い話ですね(笑)。考えたこともなかったです。
私はもともと人見知りが激しく、人前に立つのが大の苦手でした。今では信じられないでしょう?(笑) 26歳の時うつ病になり言葉を失ったことをきっかけに、何とか自分を変えたくて講師になろうと思いました。講師として本当にまだまだですし、一つ一つを成長の機会だと考えています。
昨年「福岡でお仕事を始めて7年。ようやく実績もできたから、これから母校のお役に立ちたい!」って思ったんですね。そしたら、たまたま母校である西南学院大学の市民向け公開講座の講師依頼が舞い込んできて…。本当にうれしくてありがたくて、今がんばっています。
先ほどもお話ししたように私が本当に食の大切さに気づいたのは40歳を過ぎてから。「ほんもの」にこだわるようになって心身がとても変わったんです。大きなストレスがかかっても、心が折れなくなりました。私は体のあちこちが悪く「もっと食の大切さに早くに気づいていたら…」という思いがあります。だから食の大切さを伝えたいんです。
食の価値観は人それぞれじゃないですか。生活環境も違えば、経済的な状況もぜんぜん違う。どんなに「これがいいですよ」とお伝えしても、その方それぞれできることとできないことがある。だから、その方がその方の状況にあわせて一歩良くなるための「気づき」を伝えたいっていうのが私の想いなんですね。人を変えることなんて出来ないけど、自分で気づけば自ずと人は変わっていきます。
「五十嵐先生の話を聴くと元気になるから、会いたくて追っかけてきました」と、遠くから毎週講座に通って下さった70代の方もいました。ありがたいですよね。そういう方の笑顔が私のエネルギーになります。
長い人生、いくつになっても元気で人生を楽しむためには「食を味方につける」ことが必要。人生においてできるだけ長い時間、食の大切さやポジティブに年齢を重ねるヒントを聴いて下さる方により添いながらお伝えすることが目標です。


—ありがとうございます。




7.まとめ


五十嵐様 麻生さんとは今まで何度かお会いしていますが、こうしてじっくり二人でお話することは無かったので良い機会になりました。私も対談させていただき頭が整理出来た部分もあります。何より、今日は麻生さんの将来について聞けたのが嬉しかったですね(笑)私まで幸せな気持ちになりました。ありがとうございました。


—本日はお忙しい中、ありがとうございました。



【五十嵐様プロフィール】
五十嵐和恵
NPO法人食育推進ネットワーク福岡 理事長
食育インストラクター、フードコーディネーター、ポジティブ・エイジング アドバイザー

年齢と共にただ老いてゆく「なんとなく一年に一歳年をとる」生き方ではなく、年齢と共にキラキラと輝きを増す「自ら前向きに能動的に年齢を重ねる」生き方=【ポジティブ・エイジング】を提唱。美容と健康、加齢学や色彩心理学、食のマナーなど、さまざまな視点からとらえた食の大切さを伝える。未就学児~高齢者まで幅広い世代の方に、講演会やセミナー、ワークショップを開催。現在、福岡県立高等学校食育出前講座、西南学院大学公開講座、カルチャーサロンJEUGIA天神などの講師を務める。

NPO法人食育推進ネットワーク福岡
http://www.shokuiku-fukuoka.jp/