九州の発酵力プロフェッショナル対談 第一回【食とこころの研究家 市川ともか様】

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【九州の発酵力プロフェッショナル対談 第一回】


九州の発酵力シリーズをはじめ、麻生醤油の商品を愛用いただいているプロフェッショナルと、麻生醤油代表の麻生隆一朗が対談インタビュー。それぞれの視点から「食」へのこだわりや、発酵食品にまつわる質問など、様々なお話をお届けします。


第一回は、食とこころの研究家として活動中の市川ともか様。
保健師としての視点から、食へのこだわりを伺うことができました。

<目次>
1. 食へのこだわり
2. 伝統的製法の魅力
3. その他の人気商品
4. 発酵食品との関わり方
5. まとめ






1.食へのこだわり
—早速ですが、市川さんのソウルフードは何でしょうか


市川様 やっぱりおにぎりとお味噌汁とか素朴なものがソウルフードですね。おやつの代わりに出てきた簡単なおにぎりとか、さっと作ったお味噌汁とか、そういったものが結局残ります。




—いつごろからお料理や食にこだわり始めたのでしょうか

市川様 最初に、子どもが生まれて意識をし始めました。それまではもちろん仕事として、食べ物が健康に大事だというのは頭では分かっていたんですけど、自分の生活の中でいざそれを実践しようというのはなかったんですよね。でも子どもが生まれて成長していくのを見ていくと、食べたものが結局身体を大きくしていっているんだなって意識するきっかけとなりました。
 2回目の大きなきっかけは、東日本大震災の時に、東京のスーパーから食べ物が一時的に無くなった時です。それまでは、食べ物は簡単に手に入るイメージでしたけど、実は、自分達は与えられた食材の中で選んでいるのに過ぎないんじゃないかっていうことを意識したのがきっかけです。

—お子さんが生まれてから、そして東日本大震災をきっかけにこだわり始めたとのことですが、今現在、ご家族に食事を作る時に気を付けていることやこだわっていることは何でしょうか

市川様 その土地のものを食べることです。もちろん、加工品や添加物にも気を付けています。でも、やっぱり自分が住んでいる土地、今だったら福岡・九州のものを使ったものを出来るだけ選ぶようにしたいなというところが大きいです。



2.伝統的製法の魅力
—無添加や地産地消という面でいうと、麻生醤油の商品は九州産で完全無添加ですが、商品についての感想などはありますか


市川様 まずは九州の食材にこだわってらっしゃるっていうところと、添加物を一切使ってないっていうところが情報として入ってきて興味が出ました。すごい生産者の方がいらっしゃるなあって。それで、実際に食べてみるとすごく美味しかったんですよね!こだわりも素晴らしいと思いましたし、味で惹きつけられてしまって、そこからずっと好きで使ってます。それから、きちんとした職人技で作られてるっていうところも非常に惹かれます。麻生さんの現場はまだ拝見したことがないんですけど、木桶で作っていらっしゃるとか。
 今って、木桶で作られているお醤油やお味噌とかは全国に1%ぐらいしかないそうなんです。本来は木桶にいる微生物が働いて、発酵という過程を経ていると思うんですけど、それが今はプラスチックやステンレスで作られている。本当に必要な微生物たちが働いているんだろうかって考えると・・・(苦笑)ちなみに、木桶は何年ぐらい使われてるんですか?





麻生 創業したときからなので60年ぐらいです。杉の樹齢と木桶の限界年数は比例していて、樹齢が30年のものを切って作った木桶は、30年しかもたないんです。だけど桶屋さんが大阪にしかいなくて、色んな醤油屋さんが持っている木桶が限界年数に来ているのに、新しく桶が買えなくてやめるところも本当に多くて。桶には、何度も使うことでいわゆる蔵付きという微生物がつくので、管理とかメンテナンスが大変なんです。おそらく、今後木桶の醤油、味噌っていうのは増えることは無いと思います。だから、今ある木桶の醤油、味噌を守っていく必要があります。そのためには、消費者の方に味噌や醤油って昔は木桶木樽でつくっていて、今もそういうお醤油屋さんがあるんだっていうことと、そういう醤油と市販の醤油がどういう味や香りの違いがあるのか、分かってもらうためにPRが必要になってくるかなと思います。


市川様 消費者が知らないと、失ってから気がつくみたいなことになりかねないですね。発酵食品って伝統的製法で素晴らしいものですよね。それを私達が丸ごと身体にいれることによって健康になっていく。すごく大事な部分なので、私達も知らなきゃいけないし、だからこそ、きちんとした意識で作られている製造者を消費者が応援していくことを考えていかないとなあって、最近すごく思います。本当に、日本の宝ですよね。


麻生 無くしてはならないものなんじゃないかなと思っています。創業60年〜70年の蔵元とはいえ、醸造業の中ではまだまだ若い方です。何百年と長い歴史を持っている蔵元さんは、時代によって危機的状況があったはずで、そのたびに意識改革をして持続させてきています。過度期が来ている中で、僕らも変化して色んなことにチャレンジしていくっていうのは重要だと思っていますし、醸造業が日本のものづくりとして活性化していけば色んな視野が広がってくるんじゃないかと思います。


市川様 私は食の仕事をしていると、食べ物が持つ栄養素をはじめとした最大限良いものが人間の身体に入ると良いなあという観点で見るので、安くて手に入りやすいお醤油とかも市場としては大事だけれども、きちんとしたつくりをされているお醤油とかが口の中に入っていくのが大事なことだなあとついこだわっちゃいます。


麻生 どちらも選べるのが良いですよね。昔ながらのつくりをしているところと、大量生産の醤油って食べ比べると全然味が違うので、それがいい部分だと思っています。その中でMy味噌・My醤油っていうのを見つけてくれるといいなあと思います。







3.その他の人気商品
市川様 この間、玄米味噌を食べたんですけど、あれは新商品なんでしょうか?


麻生 昔から製造しているのですが、玄米味噌は、3年以上長期熟成させたもので、玄米麹を使った米みそは全国的にも大変珍しいです。九州の発酵力シリーズ以外にも九州産原料にこだわった人気商品があって、その中でも玄米味噌は根強いファンの方がいらっしゃいます。


市川様 そうなんですね!食べた後、甘味がぱっと出てきて美味しかったです。


麻生 ありがとうございます!今の味噌は、だしの味を生かす味噌が多いですが、私はどこにもない特徴ある味の物をつくりたいなと考えているので、「家族のみそ」に関しては特殊な酵母を使って、香りに関して重点を置いています。「玄米味噌」に関しては深みをベースにした設計にしてるんですけど・・・思った以上に深みが出てしまったようです(笑)こんな風に、僕らも色々研究をして、日々開発をしています。


市川様 日々実験ですね!


麻生 味噌も醤油もファンの方がいて、お褒めの言葉をいただくことはすごく嬉しいですし、大変励みになっています。家庭の味に採用されたらもっと嬉しいですし、お子さんやお孫さんに引き継がれるような、家庭の味に溶け込んでいくのが重要だと思います。


市川様 家庭のベースに溶け込んでいくってすごいことです。







4.発酵食品との関わり方
—食とこころの研究家・保健師さんとしてお仕事をされていますが、これからの生活の中で発酵食品というものとどう関わっていきたいですか


市川様 発酵食品については、勉強する前まではそういうものがあるんだなぐらいでしたが、知っていくにつれてどれだけ発酵っていうものが私達の生活に寄与しているのかが分かって、積極的に取り入れるようになりました。今は日本全国で味噌を手づくりされるお母さんもいらっしゃいますし、講座も増えています。今まで価格だけで選んでいたお母さんたちが学べるという意味ではいい取り組みなんじゃないかなって思います。それとはまた別に、最初にお話したような、きちんとした過程を経てつくっていらっしゃる生産者の方を応援する意味でも、消費者がちゃんと理解して買う。そして生産者の方たちにはより良いものをつくってもらう、というところで両者ともに取り組んでいけたらなと思います。


—福岡でも、お味噌作りの講座は結構多いですよね。


市川様 たくさんありますね。この前麻生醤油さんが開催した味噌玉づくりイベントもすごく良いと思うんですよ。お母さんたちと講師の方だけでするのも知っていくという意味ではいいと思うんですけど、生産者の方が一緒にいるのは、また全然違う場だと思うんですよね。味噌汁は具を入れれば色んな栄養素を簡単に取れるし、自分の家ならではの味を確立できます。でも、お味噌汁のつくり方が分からない若いお母さんも増えていますし、だしが入ったお味噌を便利だからと使っている人もいる。そうじゃなくて、きちんとした味噌玉の作り方を教えてもらうことで簡単に家で作れるように。だからすごく良い組み合わせのイベントだなって思いました。







5.まとめ
市川様 保健師という仕事柄、私が教えてもらったものを皆さんに伝えていく役目があるのかなって思っているので、そのためにはきちんとした製造工程を分かっておかないと良さが伝えられません。なので、今日は大変勉強になりました(笑)


麻生 こちらこそ、ありがとうございます!製造工程といえば、気になる食品があれば是非工場見学に行っていただきたいです。お子さんと一緒に行かれると面白いと思います。私も大手さんに何社か行ったことがありますが、あまりにも機械化されすぎて、人がいない!(笑)裏ラベルだけじゃなくて、工場見学をするとどんな風に作られているのかよく分かります。見る・知る・聞くっていうのが重要なので、時間があれば観光がてら工場見学に行ってみてほしいですし、弊社にも是非、蔵見学に来てほしいです。


市川様 普段の生活の中でこういった方々と直接お話ができる機会がないので、非常に貴重な時間をいただけたと思います。まだ蔵見学に行けていないので、是非伺わせてください!


—本日はお忙しい中、ありがとうございました。





【市川様プロフィール】
食とこころの研究家 保健師 市川ともか
結婚後、夫婦関係に苦悩を抱え、出産を期に脱却。心身ともに立て直すため、看護師・保健師としての経験や知識を生かし、食分野で外側である身体を整える。身体の機能がアップすることにより心にも変化が現れることに気付き、思考よりもさらに深い部分である深層心理学を学ぶことで、内側である心を整えることに成功。心と身体の両面を整えることで、自分軸をつくる方法を体感した経験から、食とこころの研究家として、男性・女性を問わず、福岡を中心とした全国各地でセッション・講座を行う。

※保健師…看護師の資格取得後、公衆衛生の勉強をすることで保健師の国家資格を受験できる。看護師は病気になった人をケアするが、保健師は病気にならないよう、予防などの医療活動を行う




【市川様おすすめアレンジ】
味噌汁をはじめとしたスープものや、ドレッシングみたいな形で使っています!甘酒にちょっと味噌を加えると味に深みが出るので、お野菜につけたりとかべったら漬けみたいにして使ったり。おすすめは、玄米味噌を使ったレシピ。鶏肉に味噌漬けみたいな感じで薄く塗って、冷蔵庫で寝かせたあと、低音で蒸し焼きみたいに焼くと後味も甘くなり、すごく美味しいです。