九州の発酵力プロフェッショナル対談 第三回【福岡英語塾塾長・カンヌ映画祭出品の映画監督 吉村(キース)精高様】

カテゴリー: 九州の発酵力 プロフェッショナル対談

【九州の発酵力プロフェッショナル対談 第三回】


九州の発酵力シリーズをはじめ、麻生醤油の商品を愛用いただいているプロフェッショナルと、麻生醤油代表の麻生隆一朗が対談インタビュー。それぞれの視点から「食」へのこだわりや、発酵食品にまつわる質問など、様々なお話をお届けします。


第三回は、福岡英語塾塾長・カンヌ映画祭出品の映画監督 吉村(キース)精高様。
海外進出といった視点から、食へのこだわりを伺うことができました。

<目次>
1. 食へのこだわり
2. 伝統を守るためにできること
3. 醤油の海外進出
4. 使いやすさ
5. 味を知って頂くこと
6. まとめ






1.食へのこだわり
—早速ですが、吉村さんのソウルフードは何でしょうか


吉村様 ソウルフードは、カレーライスです。日本では固形のルーばかりですが、インドで本場のカレーを食べた時に、本当に色んなスパイスを混ぜてオリジナルで作っていて。それでスパイスに目覚めたんです。ターメリックをベースにして、ガラムマサラとか。そういった香辛料にぐっと魂を揺さぶられました。




—お料理や食にこだわり始めたきっかけはなんだったのでしょうか


吉村様 小さい頃から、祖父が家で晩酌を飲んでいて、日本酒1合と酒の肴にゆりの根とかを食べていたので、それをつまみ食いしていました。そこがベースとなって、味覚が出来上がっていったのかもしれないです。大人の味じゃないですか。しかも昔だから、特別な調味料なんかも無い。独特の淡い醤油と、ゆりの根の香ばしい香りと、もちっとした感触。そういうのを結構覚えていますね。



—それでは今現在、食事を作る時に気を付けていることやこだわっていることは何でしょうか


吉村様 やっぱりいちばんこだわっているのは水ですね。水、塩、それから料理で言うと醤油、オリーブオイル。後は、もう素材の味。それさえあれば、なんでも適当に作れます。

—そのこだわりの中で、麻生醤油を使っていただいていますが、どこに魅力を感じたのでしょうか?


吉村様 あとから気づいたんですが、僕は結構醤油に敏感だったんですよ(笑)
 うちの実家が櫛田神社の山笠があるところで、その隣に台湾の方がしている中華料理屋があったんです。博多でラーメンといえば豚骨じゃないですか。でも、そこは醤油だったんです。その醤油ラーメンの醤油の味がすごく気に入って、わざわざ店主に言って取り寄せてもらったんです。そういったこともあって、醤油には敏感だった。
 麻生醤油さんは、知り合いにオススメしていただいて。大丸の地下にある日田領事館で買って試してみたら、芳醇だし、余計な飾りがない味ですよね。コシがあるというか。刺し身とかにちょっとつけても、ごまかしがないので風味豊かで美味しいんですよ。それを気に入ったんです。それから、自分で手づくりのラーメンスープをつくる時に、麻生醤油さんのお醤油を使わせていただいています。自然なまろやかさが出てくるので、結構使うようになったんです。







2.伝統を守るためにできること
吉村様 未だにあの杉樽で作っているっていうのは良いですよね。あれはもう九州でも少ないでしょ?


麻生 そうですね。桶を使って仕込んでいるお醤油屋さんは九州では少なくなってきています。問題なのは、100年〜200年くらい持つ桶が更新期に来ていることなんです。今は昔と違ってお醤油の消費量は3分の1以下になってしまっているので、そうなると消費が追いついていかなくなって、これを機会にもう木桶をやめてしまうというところが大変増えているというのも現状です。せっかくある桶も解体したり処分したりする蔵元さんも多くなっていくのはまず間違いないと思います。


吉村様 大変なんですね。


麻生 会社として昔ながらの技術をどこまで維持できるのか、継続するのかというのは僕らも考えなければいけない過度期に来ているのかなと思います。その中で、木桶のお醤油とステンレスのお醤油の味や香りの違いを知って頂くことは大切だと思います。木桶でつくる労力やかかる時間によって、市販で売られているお醤油とは違う味わいが生まれてきます。今後、日本国内の消費という面では難しいかもしれないですが、例えばアメリカやオランダ、中国という海外ではどんどん醤油というものが認知されつつあります。特に付加価値のあるお醤油を買い求めている経緯があるのと、ものづくりに対する考え方の違いも特にありますので、日本国内のみならず海外へもPRをすることは重要なのかなと物凄く感じているところです。


吉村様 お醤油だけじゃないですよね。エクストラバージンオイルと組み合わせるとか。僕は結構、チーズにも使うんですよ。醤油単体でもいいし、エクストラバージンオイルと混ぜてもいいし。そうすると全然風味が変わるんです。


麻生 やっぱり、僕らが日本国内でしか考えていかなかった市場や食べ方が、こうやって海外の食べ物だけじゃなくて色んなものと融合していくことによって違う提案ができる。それによって、料理にはこのお醤油が良いとか、そういうような一つの要素が帰り咲いていくと、もっと使われていくんじゃないかなと思いますね。







3.醤油の海外進出
吉村様 この五源醤油って、プレミアム醤油じゃないですか。僕の意見では、フランスに進出するのが良いんじゃないかなと思います。


麻生 フランスは16世紀ぐらいから日本の醤油が入っていましたので、実はフランス料理に日本の醤油も結構使われている経緯がありますので、知っていただくのは重要だと思いますね。もちろん1社だけじゃなくて、共同化したり紹介してくれるツールがあったりすると嬉しいです。日本酒はそういう意味では結構成功しています。大手さんは海外に工場があったり、小さな蔵元でも見直されてきていて実際に働いている人も外国人の方が増えてきています。


吉村様 醤油って、日本酒と比較しても単価が高いでしょう。ニューヨークとかは寿司屋も多いですけど本当に美味しい醤油を使っているところは少ないじゃないですか。だから逆に、フランスとかは面白いと思いますね。この前フランスに鹿児島県から鰹節工場ができたじゃないですか。そんな風に作るんだったらいいんだろうけど難しいだろうから、まずはフランスの有名なシェフなんかに提案できると良いですよね。


麻生 地道な活動が大事なのかなとは思いますね。今、大手メーカーさんでオランダに巨大工場を建設されたところがあり、そこからヨーロッパ全土に出荷しているので、醤油がどういうものなのかを知っている方は多いと思います。でも、そこのお醤油とは味も香りも違うんだよと提案していくのは大事かなと思います。


吉村様 フランスは、口が肥えている人が多いからそういう人達に広めていけると良いですよね。しかも、口が肥えている人はシェフの方が多い。この世界ってめちゃくちゃ間口狭いじゃないですか。そういうのって面白いと思います。


麻生 仲介人というか、その土地の名士のようなそういった方々にお醤油を気に入ってもらって広めてもらうのが手かなとは思いますね。


吉村様 となると、食べ方を教えてあげなきゃいけないですね。普通の醤油の食べ方だけじゃなくて、さっき言っていたようなチーズと合わせるとか、そういう提案をしていけば、フランス人やイタリア人は好きだと思うんです。


麻生 そうですね。シェフの方はある程度アンテナがあるので入りやすいと思いますが、一般の消費者の方に食べていただくのであれば、使い方って結構重要ですよね。







4.使いやすさ
吉村様 実は、似たお醤油で有名な老舗メーカーさんのお醤油を使わせてもらってるんですけど、食べ比べると香りと密度がぜんぜん違いますよね。


麻生 そうですね。僕らも色んなお醤油を食べさせていただいてて、分析しています。例えば、そちらの老舗メーカーさんではおそらく大豆を2倍位の量で仕込んでいるので、甘味が結構あるんです。あとは、やはり弊社のお醤油とくらべて香りが少ないんですが、それはカビの違いなんです。どちらも醤油に適正なカビを使っていて、それぞれに特性があります。弊社では香りを重視しているので、旨味と香りが強い菌を使っているんです。さらに、仰る通り密度を重視しているので、ちょっとやそっとじゃ味がぶれないようにつくっています。お客様からも、3倍くらいに薄めても味が変わらないとよく言われます。
 ただ、やはり「使いやすさ」ですよね。一般的な方が醤油を使われる感覚で言うと、間違いなく老舗メーカーさんの方が使いやすいと思います。


吉村様 使いやすいといえば、最初五源醤油を使った時に瓶の蓋をこうすればいいのにって思った記憶があったんだけど…。家に帰ったら思い出すかな(笑)


全員 (笑)


吉村様 この瓶は気密性のために絞るようにしてあるんですよね。このタイプだと、使う時にちょっと垂れちゃうんですよね(笑)それが勿体無いなって。例えばエクストラバージンオイルだと注ぎ口に工夫があって垂れないようになってるじゃないですか。とはいえ、風味を逃がさないことが大事だからね。


麻生 そうですね。卓上ではこういったタイプが多いのでこの形にしています。ただ、僕らも利便性は常に考えていますので、この瓶じゃないとっていうのは無いんです。こういったお客様の声を聞きながら年々変えていこうと思っています。







5.味を知って頂くこと
吉村様 五源醤油は本当に美味しい。今まで食べた中で一番です。スープに使っても味がぶれなくてそれがすごいですよね。


麻生 ありがとうございます。醤油らしさというか、これぞ醤油というのを味わって貰いたいという思いで作っています。ただ、大量生産はできないですし僕らもするつもりはないので、おそらくこのクオリティを維持するのであれば今後も大した量は作れないと思います。


吉村様 普通の醤油の2倍近い価格のものだから、分からない人は買わないじゃないですか。


麻生 そうですね。500円を超える価格となると、やはり大きい差だとは思います。業務用であればもっと単価を下げて提供できますが、小売店で購入される際は手数料などもあるので、仕方がないんですけどね。


吉村様 でも、先日福岡の和食屋の女将さんに薦めたら使ってくれて。刺し身に出したらお客さんからすぐに味が変わったって声を頂いたみたいで、それからずっと使ってくれてるみたいです。


麻生 大分でもそういった和食屋さんで使って頂くことはあるんですが、醤油自体を分かってくださる方に使って頂けるのが嬉しいですね。九州産原料・完全無添加という強みはありますが、最終的には味で勝負なので。




6.まとめ
麻生 実際に醤油を使っていただいている方からこういったお話を聞けるのはとても貴重な機会でつくりを頑張っていこうという励みになります。もちろん、容器など提案をしていただけるとありがたいですし、もっともっと使いやすくて美味しい商品を提供していきたいと考えているので、こうして本音で言っていただけるとうれしいです。


吉村様 美味しい醤油メーカーの社長と直接お話ができてよかったです。醤油は日本の市場から見てもこれからますます需要が高まっていくという見込みはなかなか無いと思います。だから、プレミアム醤油である五源醤油は、特に海外戦略とか外から見る視点があると、生き残るだけじゃなくてトップに立てる可能性があると思います。そのためにはやっぱり、フランスとかイタリアの良い料理人や、日本の料理人と上手く協力していくのがヒントになるのかなとは思います。


—本日はお忙しい中、ありがとうございました。





【吉村様プロフィール】
吉村(キース)精高
『医大合格請負人』福岡英語塾塾長でありながら、カンヌ映画祭出品の映画監督。幼い頃から映画が大好きで映画監督を夢見る。大学卒業後、映画に絡んだ仕事を経験するも断念。27歳で得意だった英語を再度勉強し、経営経験を積んだ後英語塾を開校。英語を勉強していく中で得た、自分なりの方法論を用いた指導で人気が集まる。62歳になりカンヌ映画祭出品「デラシネ」で監督デビュー。若者たちの夢をかなえる生業でありながら、自身の夢をもかなえようとするチャレンジャー。

▼福岡英語塾 公式HP
http://www.fukuoka-english.net/
▼「デラシネ」予告編トレーラー
https://youtu.be/seMUyJwAh2I


【吉村様おすすめアレンジ】
麻生醤油さんの醤油をエクストラバージンオイルとちょっと混ぜると、和洋中のどれともつかないような、また変わった味になるんですね。それとなずなの塩(※1)を足して、刺し身でもちょっとつけて食べるとめちゃくちゃうまいですよ。今までの普通の醤油でやった場合と、微妙な変化があって全然違うので面白いです。

※1 なずなの塩—大分県佐伯市でつくられている自然海塩
http://www.nazunanokai.com/solt.html